卒業式みたいなさびしさなんだと思うことにする | 現実なんてこんなもの

卒業式みたいなさびしさなんだと思うことにする

 わたしの努力の甲斐あって、元同居人君と我が同僚なる友人がうまくいきそうだ。もともと話がかみあうふたりだから、いいんじゃないか……や、自分じゃ敵わないんじゃ、と思ってたんだ。

 画策が成功して、いいかんじでふたり、晴れた秋の日の吉祥寺デート。帰ってきたふたりは、いつになくハイで楽しそうだった。あれは、誰が見ても恋のはじまり。
 あさってからは、彼らふたりと、もう一組のカップルとながい出張の旅。すでにペグはがんがんうってあるから、この期間にしっかり進むことだろう。さいわい旅の後半には、男女/女女/男+よその男性と相部屋って日が決定しているから、ここで「異性の兄弟がいるからぜんいん同室でもいいよー」つってたふたりを一部屋にまとめる、と。不慣れなヨーロッパの旅。ふたりともはじめての、狭い寝台列車のキャビン。舞台の仕掛けは最高。うまくいかないわけがない。

 あのふたりは、きっとすぐにしあわせになる。
 あのふたりは、きっとずっとしあわせになる。

 わかってるのに、なんでこんなにさびしいんだろう。むねがいたいんだろう。
 夜毎電話して、他の人を捜せとあんなに言い続けたのに。

 
 けっきょく最後まで、陽の光の元で会うことはなかったね。いつもわたしは不機嫌で、会うのは終電がなくなる深夜。
 いちどでいいから、昼間の街で遊びたかった。それは、かなわない夢だから、憧れるんだ。いつまでも、いつまでも、これからも、いつまでも。