14平米のワンルームはふたりで過ごすには狭すぎる | 現実なんてこんなもの

14平米のワンルームはふたりで過ごすには狭すぎる

 会いたくて、会いたくて、ご飯食べる? の誘いに、風邪っぽい体調をおして無理矢理出かけた夏の夜。ひさぁしぶりに外で会うきみに、こちらは少し緊張してた、かもしれない。うちの最寄りのちいさな駅で待ち合わせ。街にいかない? って云われたけれど、あんまり乗り気じゃなくてごめん。

 ぜんぜん変わらない筈のきみ。いつもどおりのくだけた会話。だけど細かくすれ違う。べつべつの友達としゃべる機会がふえるたび、選ぶ言葉も、流行りの話題も、会話のテンポも離れてく。のめりこめない話を聞きつつ箸を口に運んでいたら、「なんか虚ろじゃない?」と聞かれたね。そうかもしれない。話の筋を追えなくて、いっしょうけんめい話すきみを、ただただぼんやり眺めていたから。

 大好きなことも、いとしいことも、変わらないのになんだか苦しい。生活環境も交友関係も違うふたり。距離がはなれてしまったら、手をつなぎ続けるのは困難なの? 
 わたしの好きな曲も映画も、きみはあまり好きじゃないらしい。いや、知らないから楽しくない、というべきかも。きみが最近気になってる曲や本は、タイトルすら聞いたことがない作品ばかり。それを知っているのが友達という文化では、きっと私は部外者だ。あるいは、話の分からない、ただの大人。少なくとも、仲間ではないもの。

 わたしがあちこち出かけている間に、きみは夜中のチャットで仲間を増やしてる。そこで交わされたキーワードを前提で書かれたきみの日記。ぜんぜん最近見てなかったっけ。けどね、目の前で読んでもどれが固有名詞とすら分からないわたし。有無をいわさず見せられた動画に、どうすればいいのかわからず戸惑うわたし。怪訝な表情のきみ。何を言いたいのか、わからなくてごめん。きみの声が聞こえなくてごめん。だけどかなしい、とても。

 お互いの言葉が完全に通じない日が来ても、ふたりはいっしょにいられるのかな。