眠れぬ夜のワンルーム | 現実なんてこんなもの

眠れぬ夜のワンルーム

 まだ時差ぼけが抜けなくて、こんな時間に目が冴える。夜白む窓を眺めては、いかに出張中の生活が規則正しかったかを知る。旅立つ前は、さぼっていた筈の体内時計が、まだ宵の口だと主張する。だーめーだー。

 外はぼんやり明るくて、だけど文庫を読むには灯をつけたい、そんな頃には、なぜだか引っ越し気分が高まる。中途半端な光の加減が、部屋の狭さを照らし出すのだ、きっと。10年目の我が部屋。14平米のワンルーム。

 ここじゃだめ、な訳じゃない。もうちょっとだけ、広いところに住んでみたいだけ。そんな気持ちで探しているせいか、次の住処はなかなか見つからない。今年の夏は、落雷がとても綺麗だった。広い窓から見える眺めは、緑に満ちていつも安らぐ。もう少し、あと少しだけ、今の部屋が広ければ。

 そうこうするうち、光は朝の色に変わる。カーテンを開ければ、どこまでも広がる空。日の出前の、やわらかな暖色から寒色へのグラデーション。元気な烏の声。この明け方の空気が好き。

 このままずっと、ここに住むのかもしれない……と思う朝。心の何処かで、警笛が鳴りつづいている気がした。